丹波篠山の黒豆は非常に長い歴史があると言われています。その歴史を知ることで、より丹波篠山の黒豆が身近になることでしょう。今回の記事では、丹波篠山の黒豆のルーツをたどる旅をしていくことにしましょう。
その起源は江戸時代以前とも言われている

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まずは昭和より前の丹波篠山の黒豆の歴史について取り上げていきましょう。
丹波篠山の黒豆の歴史は、一説には、江戸時代以前にまでさかのぼるとされています。ただしこれに関しては疑問符がつけられるものであって、正確で明確な期限だというには難しいようです。黒豆の歴史をどこと解釈するかで変わってくるという問題点もあります。
食品としての黒豆については平安時代にすでに人の手によって作られていたとも考えられていますが、このあたりも少しあいまいな部分でもあります。
また、戦国時代(1400年代の後半以降)は、非常食のひとつとして、黒豆を使った丸薬が配られていたとされています。
1700年代に入ると、もう少し詳しい情報が出てきます。寛政11年、第11代目将軍徳川家斉の時代に、丹波篠山の黒豆について描かれた書が出てきます。それの名前は「丹波国大絵図」と呼ばれるものです。ここに黒大豆のことが取り上げられています。「黒大豆は、丹波の国の名産品である」という取り上げられ方であり、このときにはすでに、丹波篠山の黒豆がよく知られた名産品だったということがわかります。
大都市江戸には、日本各地からさまざまな特産品が集まってきます。丹波篠山の黒豆もまた、例外ではありませんでした。江戸時代、時の幕府に、「川北黒大豆」という名称を与えられて「参内」することになります。これを機に、丹波篠山の黒豆は江戸に広く知れ渡るようになりました。
加えて、1805年に出された書物には、「和名で大豆と呼ぶときには味噌豆を指す。薬の処方において大豆というのは、黒豆のことを言う」という表現がなされています。
このようにして広まっていった丹波篠山の黒豆は、江戸時代から明治時代においても、多くの人に愛され、丁寧に栽培されてきました。現在も丹波篠山の黒豆の名産地として知られている篠山市日置において(当時の名前は「日置村」)、豪農が優秀でおいしい黒豆を選別するという試みを行いました。このときに選ばれた豆は、「波部黒(はべぐろ)」と名付けられました。この波部黒は、現在も脈々と息づき、黒豆のなかでも最高峰に位置するものとして珍重されています。何世紀も前にできた黒豆が、令和の今の時代においても広く愛されているという事実は、特筆すべきことだといえるでしょう。
さて、この波部黒の有能さは、日置村や近辺の村に知られるだけではとどまりませんでした。江戸幕府に川北黒大豆が献上されたように、波部黒もまた、時の宮内省に納められるという栄光に浴すことになります。これは丹波篠山の黒豆の地位をさらに向上させるものでした。
この盛り上がりを受けてか、明治34年に、篠山市で農会が創立されることになります。
昭和以降の丹波篠山の黒豆の歴史について

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長い歴史を持つ丹波篠山の黒豆は、昭和に入ってから少しずつ変わっていきます。
まず、2つの大きなブランドであった「川北黒大豆」と「波部黒大豆」が統一されます。これは、「丹波黒大豆生産出荷組合」によって行われたもので、これ以降、川北黒大豆と波部黒大豆は「丹波黒大豆」というかたちで広まっていきます(ただし、前述したように、現在でも「波部黒」という名称は残っています。現在においてこの呼称が使われる場合、「丹波黒の品種を、さらに細分化させた言い方」とされることが多いようです。なお、「川北黒」も残っていますし、「兵系黒3号」と呼ばれる豆もあります)。
さらに、丹波篠山の黒豆の研究は進んでいきます。兵庫県の農事試験場が、波部黒を取り寄せて試験を行い、奨励品種としてこれを指定するなど、さまざまな動きがみられるようになりました。また、昭和56年には、丹波黒のなかからさらに品質の良いものを選定して、「新丹波黒」と名付けることになります。
上でも挙げた「兵系黒3号」ができたのは、河北黒大豆や波部黒大豆よりもずっとずっと後のことです。これは平成元年、今からわずか30年ほど前に作られた黒豆です。これもまた、波部黒のなかから優秀なものを選別して作られています。現在では、この「兵系黒3号」「川北黒大豆」「波部黒大豆」が、黒豆ブランドの筆頭となっています。
長い長い歴史に育まれてきた丹波篠山の黒豆は、これからも、さまざまな研究と改良を繰り返していくと予想されます。今現在生きている人が、まだだれも姿もかたちもなかった時代から愛されてきた丹波篠山の黒豆は、これより先もずっと愛されていくことでしょう。お正月のおせちを彩る、ふっくらと煮込まれた丹波篠山の黒豆の美しさは、だれもが知るところでもあります。
鍋谷萌子
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