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黒豆の不思議

黒豆の不思議

作物的な特性

丹波黒は、兵庫県中部にて6月上旬播種・12月上旬成熟の晩生種です。ただ生産現場では正月用の出荷のために、黄葉期よりやや早く葉取りなどをして強引に収穫してしまうことが多く、霜による強制成熟もあるので、「大豆の成熟期調査基準」に定義されているような状態(子実が硬化し、莢を振ると中でカラカラ音がする)には実際のところならず、成熟期は分からないといった方が正確でしょう。

普通の大豆に比べて草姿が大きく、主茎が太い。茎の径は2cm以上になることもあります。しばしば蔓化(まんか)、倒伏し、主茎下部や下位分枝の付け根が折れたりするので、栽培管理に苦労が多いです。そのための配慮の一つとして、極端な疎植(条間1.2~1.5m、㎡あたり2本前後)が行われています。

葉色は薄く、子葉は円形で大きい。葉が大きいという性質は、子葉が大きいということにもつながり、子葉が大部分を占める大豆の子実を大きくしているものと考えられます。日照に応じて葉の角度を変える調位運動はほとんどみられません。ダイズモザイクウィルスに抵抗性がなく、8月頃までに大部分の固体が発病します。花が咲いても、そのうちで莢実になる割合は、虫害や乾燥害がたとえ軽微でも、比較的少ないのが現状です。言い換えれば結莢率が低いので、同化養分が葉に残り、登熟期の葉は厚く、硬く、ウイルスの影響もあってシワが多くなります。

以上のこと(極端な疎植、草姿、葉の外観など)から、普通の大豆の知識があり、かつ丹波黒のほ場を初めて見る人は、「これが大豆か」と驚くことになるでしょう。

丹波黒の特徴は?
★子実はおそらく世界一の極大粒であるとされていること。
★大粒であればひどくなりがちな裂皮は、丹波黒では極めて少ない。
★粒形は幅/長さの比が0.9以上の“球”で種皮の表面に白い「ろう粉」を生じる。

丹波黒の「障子粒」

数年に一度ぐらいの頻度で、種皮に莢の内部表皮が白く薄く付着し、あたかもカビが生じたかのようにみえることがあります。

これを産地では「障子粒」と呼んでいます。この原因については明らかになってはいません。

また、他の品種の黒大豆にも同じくこのような現象があることから、黒豆の表皮の特異性によるものと考え研究が進められています。

その大きさの目安は?

3L サイズ 12mm以上
2L サイズ 11~12mm
L サイズ 10~11mm
M サイズ 8~9mm
S サイズ 7mm以下
地域によって多少異なります。

丹波黒の変化

丹波黒は1960年ごろまでは兵庫県から京都府にかけての「丹波地域」の南部の一部で栽培されていた在来品種で、大粒ということでは当時から有名でした。

劇的な変化を遂げた!それは大粒化と晩生化である。

1950年ごろの兵庫県で確認している黒大豆の百粒重はおおむね40g台で、現在では改めて80g前後とされています。また成熟期は11月から12月へと晩生化したと考えられています。

50年のほどの間に、もともと日本一大きかったものがさらに2倍に大粒化したことになります。稲や大粒の種子の常識では考えられない奇妙な現象です。

丹波黒は、遺伝的変化が比較的起こりにくい自殖作物である。

大粒化の原因として考えられること(理論的な検知)

(1) 原種管理をしない在来種で、産地内に遺伝的変異を多く含んでいた。
(2) 転作に伴う新興産地(滋賀や岡山などの他県)を台頭を契機に、旧来の産地では、大粒品を生産することによって伝統産地(丹波篠山)の優位性を強調しようという考えが強くなり、他では作れない大粒のものを主に生産した。
(3) 丹波黒が高い水準での生産をされ続けたことにより、良品位として成長した。
(4) 全国の生育環境が整備され、生産技術が上がったことにより、元々、大粒の遺伝をもっていた丹波黒がその素質を開花させ、更に大きくなった。

食品素材としての特性

丹波黒には、大粒の中では最高の美味しさ、煮豆の軟らかさ、風味の良さがあり、官能調査ではこのことは歴然とした結果として現れます。それゆえ丹波黒は煮豆用大豆の最高級品に位置づけられています。この形質は枝豆の食味にも発揮されますので、丹波黒は近年、枝豆としても最高級品に認められることになりました。

丹波黒の産地は増加しましたが、旧来の産地の生産者と流通業者の中には「新興産地の黒豆は外観は同じでも味が劣る」という意見が多いのが現状です。

品種名 粗タンパク 粗脂肪 全 糖 可溶性糖 灰 分
丹波黒 37.1 18.7 20.1 19.2 5.1
タマホマレ 37.1 19.0 20.0 16.9 5.2
エンレイ 39.6 17.2 17.9 15.6 5.6

上記の全糖の高さが煮豆の軟らかさに、可溶性糖の多さが食味の良さにつながっている。

国産大豆の中での位置づけ

品種に求められてきた能力は、とにかく日本国内で、大豆生産の安定を定着させようというねらいで、「安定多収」や「広域適応性」に重点をおいていました。実際にそのときに登場した「タマホマレ」などは、大豆の生産性をそれまでより飛躍的に上昇させ、農家を驚かせ、生産意欲にも結びつき、確かに国産大豆定着に大きく貢献しました。

しかし、この時期の品種目標は俗に「検査受けはよい」という販売者目的の観点であり、消費者ニーズを考えたものではありませんでした。タマホマレは粒揃いがよく外観上の欠点(褐目、紫斑粒、褐粒斑粒、裂皮粒)が少ないものでした。この検査規格は、外観上煮豆にふさわしい大豆を選ぶ観点に立ち、その判定結果が価値を決める仕組みになっていますが、現実には国産大豆の最大の用途は豆腐であるという食い違いが続いています。

このころ丹波黒は、国産大豆全体の中で、特異な大粒ではあるが栽培が難しいものであったために取り残された地方品種の一つにすぎませんでした。

国産大豆は価格面で圧倒的に差のある輸入大豆に対抗して、生き延びるための性格付けを明確に求められるようになってきました。すなわち用途別の、輸入大豆にない優れた品質特性を持つ、言い換えれば優れた特徴の故に高価でも需要が成立し、そのためには、ある程度までは栽培適性が劣ることがあってもやむを得ないとさえ考えられるようになってきました。

そうなると、その方向の一つの極に丹波黒がいることに大豆関係者は気がつきました。他の品種では替えられない煮豆材料として抜群の品質特性と、栽培者泣かせの作りにくさの併存。普通大豆に比べて栽培管理に数倍以上の手が掛かり、収量は半分、しかし販売単価は数倍から10倍以上という丹波黒を、もしできれば手がけたいという地域が全国に増えてきました。このような関心の高まりは、丹波地域への全国からの視察の多い現状にも現れています。

その意味では丹波黒は、もはや兵庫、京都だけの特産品ではなく、生産地域は西日本全域に広がり、国産大豆の中で重要な品種の一つになってきました。

少し理論的な面での「丹波黒」の事がわかったかな?

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