鍋谷萌子
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「黒豆と釘」という一見関係のなさそうなこの2つのキーワードは、実は昔は非常に関連深いものとして扱われていました。
人によっては3日間という長い時間をかけて煮込み、砂糖をたくさん使っているため保存もきき、煮汁までおいしいこの人気の「黒豆」と、釘の関係を解説していきます。
なぜ黒豆に釘を使うのか、その種類について
「おせちのシーズンに黒豆を煮た」という人のなかで、特にやや古いレシピを使った人は、「錆びた釘を黒豆の中に入れて弱火で煮る」という表現を見たことがあるのではないでしょうか。
たとえば、黒豆を煮込むときの材料として、
・黒豆200グラム
・水600ミリリットル
・砂糖200グラム
・重曹小さじ4分の1
・醤油 大さじ1と、大さじ1.5
・錆びた釘
などのように表記されているレシピです。
このときに使われる「錆びた釘」は、料理の味自体を左右するものではありません。
また重曹などは黒豆の柔らかさを出すために役立ちますが、釘は黒豆の仕上がりの柔らかさにも影響を与えません。
では、なぜ昔から人は黒豆に錆びた釘を入れてきたのでしょうか。
それは、錆びた釘が黒豆に与える「色の影響」のためです。
錆びた釘に含まれた鉄イオンが、黒豆の色素であるアントシアニンと結合して、色鮮やかでつやつやとした黒豆を仕上げるサポーターとなってくれます。
アントシアニンは煮込むことで退色していくものですが、色が悪くなる黒豆を、錆びた釘の鉄イオンが助けてくれるわけです。
お正月を彩り、一年の始まりを寿ぐためのおかずである黒豆は、かつては今よりも重要度も高く、「いかに色鮮やかに、いかにおいしそうに、いかに腐らないようにするか」を考えることが大切でした。
錆びた釘を黒豆と一緒に煮込むことは、(上記のような理論が確立され、周知される以前であっても)黒豆を作るご家庭の主婦にとって、とても大切で、またごく当たり前のことでもありました。
なお、なんとなく体に悪い印象のある「錆」ですが、錆びた釘から出る成分は人体には影響がないとされています。
体に害を及ぼすものではないので、黒豆と一緒に煮込んでしまって問題ありません。
また一説では、「錆びた釘からミネラルが出るので、むしろ体によいのでは」という意見もあります。
ただ、入れるときはやはり一度きれいに釘を洗ってから使うようにしてください。
特に工具箱などに入れておいた釘は、一度洗浄しておくことが望ましいといえるでしょう。
釘を使う際の注意事項
ここからは、釘を使うときの注意点について解説していきます。
1.けが防止のために、必ず袋に包んでください
釘は先端が鋭くとがっているものです。黒豆に直接手を突っ込んで料理をする人はいないかと思われますが、それでも、思わぬけがの原因になる可能性があります。
そのため、錆びた釘を入れる際は、必ず袋に包んでから入れてください。
なおこの「袋」は、ガーゼなどで十分です。
この時期は焼き豚を作るためのタコ糸がご家庭にあるところも多いでしょうから、ガーゼで釘を包む→タコ糸で縛る というかたちが良いかと思われます。
2.新しい釘ではなく錆びた釘を使う
黒豆の退色を防ぐためのキーワードとなっているのは、「錆」です。
そのため、新しい釘ではあまり効果が得られません。また、錆びの程度が軽い釘でも、効果は薄いといえます。
そのため、黒豆と一緒に煮るには、しっかりと錆が浮いた釘を使うようにしましょう。
3.現在における「錆びた釘との付き合い方」を知っておく
ここまで「錆びた釘と黒豆」についての関係性を解説していきましたが、実は現在、ご家庭で「錆びた釘」を手に入れることはなかなか難しいといえます。
昔から錆びた釘がある、あるいは工具箱に使わなかった釘があるというご家庭はともかく、「黒豆を煮るために、新しく錆びた釘を手に入れることの難易度」は昔よりぐっと上がっています。
なぜなら今販売されている新しい釘(ホームセンターで手軽に買える釘)は、多くは錆止めの加工をされているからです。
この錆止めの加工をやすりでこすって落とす→塩などに付け込んで錆を浮かせるようにする という工程を踏んでも、十分な錆の量は確保できません(※専門家の監修の元で実験済み)。
技術の躍進、より良きものをより手軽により便利に手に入れられるようになった結果、昔は当たり前にあった「錆びた釘」が手に入らなくなったわけです。
このようなこともあり、現在は「鉄卵」と呼ばれる専用の道具も出ています。
「黒いつややかな黒豆を作りたい、でも錆びた釘が使えない」ということであれば、これを試してみるのもよいかもしれませんね。
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